[就職氷河期世代]美大卒業後の進路は?

[就職氷河期世代]美大卒業後の進路は?

2019年1月18日

こんにちは。ウリボウです。

世の中の多くの人が芸大・美大の学生に持っているイメージの一つに「就職しない」もしくは「就職先がない」というものがあると思います。そのイメージのせいか、美大受験を親に反対された人は私の身の回りにもいました。

最近は親御さんから「子供が美大に行きたいといったら絶対阻止する!」と聞いたりもします(私の前でそれを言うかと思いましたけど)。反対する理由はいろいろあると思いますけど、今回は「美大を卒業しても食べていけない説」についてのみ取り上げたいと思います。

私が大学を卒業したのは2000年、就職氷河期の頃です。普通大学の学生でも就活に苦労していたこの時代に美大生たちはどうしていたか。私の見知っている範囲でお伝えしたいと思います。

※あくまで個人の見解です。

美術の系統は大きく分けて二つ

まずは美術系の学科構成についてざっくりまとめますね。

1:ファイン系…油絵、日本画、彫刻、版画※ファインはファインアートの略

2:デザイン系…グラフィック、Web、空間演出(インテリアやファッションなど)、工芸工業(陶芸、家電、自動車など)、建築、デザイン理論関連

他には映像(映画、アニメーション制作)や芸術学(美術史研究)などもありまして上の分類に入れるのが難しいのですが、だいたいこんな感じです。

ちなみに、例えば油絵を専攻したらずっと絵を描いているのかというとそんなことはありません。

各学科には必修科目と選択科目があって、必修科目は学科の専門知識や技術を学ぶ授業ですが選択科目では他学科の授業を受けることができます。ですのでファイン系の人もデザインの授業を受けますし、その逆もあります。私はデザイン系出身ですが3年生の時に彫刻(石彫コース)の授業を受けていました。

ファイン系とデザイン系で就職先の傾向は違うのか

ファイン系できちんと就職するタイプの人は美術教師になっていることが多い印象です。

デザイン系の人達というのは就職前提で勉強していますので、卒業後は一般企業のデザイン室や広告代理店、デザイン事務所、出版社などで働く人が多いと思います。

とはいえ系統による棲み分けがあるわけではなく、ファイン系出身でゲームメーカーのデザイナーになった人や広告代理店の内定を取った人、デザイン系出身で鍼灸師や料理家といった別の分野で活躍されている人もいます。

美大生の就職パターン

さてここからは私の身の回りで見聞きした卒業後の進路・職業について具体的に挙げていきたいと思います。

パターン1:美術系職種に就く

これが一番多いパターンですね。先ほども申し上げたように美術教師になる人や一般企業のデザイン室や広告代理店、デザイン事務所、出版社でデザイナーになる人は多いです。

デザイナーといっても、工業製品のデザインをするインダストリアルデザイナー、ゲームキャラクターのデザイナー、装丁デザイナー、Webデザイナー、グラフィックデザイナーなどジャンルは様々です。

他には美術館・博物館の学芸員、アニメーター、印刷会社勤務、漫画家、俳優、靴職人、箒職人、影絵劇団所属、画廊勤務、扇子の絵付師、漆器職人、舞台衣装制作、イラストレーター、絵本作家、絵画教室講師、専門学校講師、カメラマンなど。

パターン2:非美術系職種に就く

非美術系を選ぶ人は「制作をメインにしたいから仕事は融通が利く範囲で」という考えの人から美術以外に打ち込めるものが見つかった人、もう美術からは足を洗うといった人までいろいろです。

このパターンでは事務職、接客販売職、介護職に就く人が多い印象ですね。他には市役所職員や、先ほども挙げましたが鍼灸師に料理家、農家(自給自足)、左官職人といったところでしょうか。

パターン3:そもそも就職しない

世間の美大生に対するイメージはまさにこれなのでしょうが実際は少数派です。

このパターンで多いのは、パターン2でもあった「制作をメインにしたいから仕事は融通が利く範囲で」というタイプの人です。2と違うのはバイトを掛け持ちしているところ。

他には留学する人や、「いかに働かずして生活するか」を追求している人、彼女の家に転がり込む人、結婚する人、バンドマン、自分で劇団を立ち上げた人など。彼らが今現在どうしているかというと割と幸せに暮らしているようです。

なかには30歳を過ぎていきなり堅い職業についたり、長年主婦だったけどアトリエを開業したりと行動力のある人が多いと思います。

美大生は求人情報をどこで得るか

いろいろな職業を挙げてきましたが、みんなこれらの求人情報をどこから得ているでしょうか。基本的には大学の就職課(名称が変わってるかも)というところに各社から求人情報が集まってきますので、そこへ出向いて分厚いファイルをめくり情報収集をしていました。

ですが、これは2000年頃のインターネットが今ほど普及していなかった時の話です。現在は各大学のウェブサイト上で情報検索ができます。最近の卒業生の就職先についてもウェブサイトに情報が載っていますので気になる方は調べてみてはいかがでしょうか。

食べていけるかどうかは、結局その人次第

月並みな答えになって申し訳ないですが、そうとしか言いようがないといいますか。美術系に限ったことではなく、どう生きるかとか仕事とは何かということを自分なりに考えて行動した人はそれが結果に表れていると思います。そういう人は時代のせいにしないですしね。

ちょっと話は逸れますが、私くらいの世代は就職氷河期だのロスジェネだのと世間からカテゴライズされていて「頑張って就活したけど非正規の仕事にしか就けなかった」と思われているのでしょうが、少なくとも私の身の回りでは真面目に就職活動していた人は正社員で内定が出ていましたし、社会人になってから知り合った美術系の同世代で「新卒でしかたなく非正規」という人には会ったことがないです。

私の行動半径が狭いので現実をわかってないとお叱りを受けるかもしれませんが、どんな形で仕事をすることになっても、または仕事をしなくても「自分で決めたことだから」と納得している人が多いのではないかと思っております。私含め。

長々と書いてしまいましたが、これで美大生に対する誤解が少しでも解ければ幸いでございます。

それでは今日はこのへんで。